現在、空き家を流通させる上において1つのネックとなっているのが所有者の特定です。


基本的に空き家が発生する要因として、高齢者等の介護施設入居、サラリーマンの転勤、所有者の死亡などにより物件の所有者が変わります。


しかしながら不動産登記は任意であり、登記後に所有者が転居した場合も住所変更の通知義務が無いため、不動産登記では所有者が特定できない場合があります。よって、空き家の所有者が不明という事態も発生します。

 
そこで、所有者を知るひとつの方法として「固定資産税」があります。
土地や家屋を所有している人に納税の義務がありますので、空き家でも固定資産税の支払いを行っている方が所有者となります。


現在では空き家対策特別措置法により、空家等の所有者等を把握するために市町村長は固定資産税情報の内部利用等が可能となりました。そこで、全国宅地建物取引業協会連合会は国土交通大臣宛てに「空き家所有者情報の開示への提言書」を提出すると報告しました。


空き家所有者に係る固定資産税情報を市町村長だけでなく、宅建業者に開示できる仕組みを求める提言書で、住宅ストック(空き家)における円滑な流通を目的としています。個人情報保護の観点から、国が民間業者に対して個人の情報を開示するというのは非常にハードルが高いかもしれません。


仮にこの提言書が採用され、固定資産情報の開示が可能となれば、「コンパクトシティー」を取り組むにあたって、都市部に人口を集約するという意味では、都市部に点在する空き家については流動性が高まりますが、空き家が多い過疎部では現状とあまり変わらないでしょう。そういった意味では、固定資産税情報の開示だけではなく、過疎部についての空き家に対しても対策を講じる必要があるでしょう。

文責 山口晃平